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抄録「耳管開放症」の病態と治療〜私の体験





 「耳管開放症」は耳管が持続的に開放状態にあることにより、耳閉感、自声強調(自分の声が強調されて不愉快に聞こえる)、呼吸音聴取(鼻呼吸するときにゴーゴー、ザーザーなどの音が聞こえる)などの不愉快な症状を生じる。これらの症状は前屈、仰臥位により消失する。

 原因は耳管周囲の脂肪などの支持組織の減少、硬化による。

 治療は耳管咽頭口への薬剤(ルゴール液など)噴霧、加味帰脾湯の内服、耳管ピンの耳管内腔への挿入などが行われている。

(以上は「今日の耳鼻咽喉科治療指針」で小林俊光先生が記載されているものを要約したものです)

 私は、本症の局所を観察した結果次の特長を発見した。

 耳管咽頭口周囲粘膜〜鼻腔粘膜の乾燥、鼻腔〜上咽頭に粘性分泌物の付着、口腔内の乾燥、耳管通気時の乾燥音

 これらの点から、本症は耳管粘膜の乾燥化により耳管が広がり諸症状を生じているものと考えられる。

 従って、いわゆる「耳管開放症」の中には「耳管乾燥症」と考えられる病態が存在すると考えられる。

 治療耳管周囲の乾燥を改善するため、白虎加人参湯、麦門冬湯、滋陰降火湯などの滋潤剤が適している。今回は白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)を用いて治療を行った。

 

(症例1)36才 女性

 3日前から耳がつまった感じがし、鼻から耳に呼吸音が抜けて呼吸困難となる。下を向いたり、横になると治る。口腔内、耳管周囲やや乾燥。音響耳管法により耳管開放症と診断する。白虎加人参湯を投与した。内服直後から症状軽快し、2日後治る。

 

(症例2)62才 男性

 10日前から左耳に耳鳴りが生じる。フーッ、フーッと呼吸音と同じ音が聞こえる。下を向くと治る。口腔内、耳管周囲やや乾燥。音響耳管法により耳管開放症と診断する。白虎加人参湯を投与した。2〜3日後から症状軽快。ほとんど気にならなくなる。

 

(症例3)73才 男性

 半年前に胃がんの手術をしている。術後から左耳が、ゴーゴー音がしている。頭を下げると治る。耳鼻科外来を受診。「そのうち治る」と言われるも治らない。口腔内、耳管周囲乾燥。音響耳管法により耳管開放症と診断。白虎加人参湯を投与した。内服数日してから不愉快な音は軽快した。

 

(症例4)72才 女性

 5年前から耳管開放症にて、加味帰脾湯を内服している。内服すると気分は良くなるも、自分の声が耳に響く、ゴーッと音がする、鼻で息をすると響く、などの症状は残って治らない。口腔内乾燥あり。白虎加人参湯を投与した。内服数日してから不愉快な音は軽快した。

 

 滋潤剤作用のある白虎加人参湯「耳管乾燥症」に用いると、乾燥化した耳管粘膜は潤い、耳管機能が正常化する。白虎加人参湯を内服すると、早期から効果が生じるのが特長である。(白虎加人参湯:知母、石膏、人参、甘草、粳米)

 

 この抄録を基にして、「高知漢方臨床セミナー」(8月25日)にて講演をおこない発表しました。また「日本東洋医学会愛媛県部会」(9月11日)にて発表します。その他の学会にても発表予定です。

 

 

《参考》 白虎加人参湯

(症状治療)

 感染症で発熱・発汗機転が過度に亢進している状態に滋陰清熱(解熱しながら体液を補う薬)として使用する。高熱、口渇が強く、全身からの発汗などを目標にする。

(長期使用)

 慢性疾患において体内の熱を冷まし、中枢性興奮を抑制し、組織液を潤すことを目標に、糖尿病、精神科疾患、アトピー性皮膚炎などに使用される。

 major tranquilizer の副作用のひとつである口渇をとるために使われるが、単なる副作用をとるための処方ではなく上記のごとき向精神作用を有する。

(花輪壽彦 漢方診療のレッスン)

 


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