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2003年5月12日号
「今週の談話」
最近の天気はまるで梅雨のような空模様です。庭の木々は枝葉がどんどん広がって行きます。新緑は感動的ですが、枝葉が増え過ぎるとうっとうしくなります。虫も繁殖期で葉っぱにいっぱい付きます。モミジの葉にはアブラムシがびっくりするほど付着します。毛虫も出てきます。
その様に心配していると、Sさんがタイミング良く薬の散布に来てくれました。黙っていても、きちんと庭を管理してくれるので助かります。
鳥も繁殖期で、モズがひなを連れて、庭木に止まっていました。キッキ、キッキとひなが餌さをねだっています。親鳥は、木の枝に突き刺していたカエルを、くちばしで取り、口に含んで柔らかくしてからひなに与えていました。
エゴノキの花が満開です。桜の花を小さくしたような花ですが、こんなにかたまって咲くと華やかです。しかし、この木の実は有毒で、魚を麻痺させて捕る時に使われたそうです。また、この実は食べるとえごいので、エゴノキと呼ばれ出したとか。
夕方になり、急に身体がしんどくなってきました。時々、大きく深呼吸し、丹田に力を入れてみますがすっきりしません。以前に、突然私を襲った症状の初期症状に似ています。
午後から仕事を始めたとたん、急にフラフラして、視点が定まらなくなりました。立っておれません。顔が紅潮しているのに気づき、血圧を測ってみると相当血圧が上がっていました。精神安定剤を飲んで落ちつきを取り戻しました。
その後、時々この症状は出ていましたが、最近は全く落ちついていたのに、また発作が起きたようです。自律神経失調症と呼べば良いのでしょうか。ストレスの高まりが原因であることは、間違い有りません。
今回も、これは大変と思い、急いで精神安定剤を飲みました。飲んでもすぐには効きません。やはり仕事は無理です。顕微鏡下に見る、鼓膜が注視できません。手元が狂いそうで鼓膜切開は不可能です。診察待ちのカルテの山が余計に私を焦らします。あと30分は必要です。
「体調が悪い。ちょっと休んでくるから」と、スタッフに告げて、私の部屋に入りソファーに横たわりました。目を瞑ると、いろんな光景が浮かんできます。中学卒業後亡くなった友人、大学に入る前に消化器出血で死んだ友人、大学時代に自殺した学友。彼らの顔が浮かんでは消えます。
「ああ、オレももう長くないんだなア」と、急に弱気になり目に涙がこぼれてきました。このまま死んだら、妻にも子供にも何も言葉を残してやれない。
「ああ、遺言状を書いておきたかったなア」と後悔しました。後悔しながら、言葉を考えていました。
妻に、愛する妻に。私はあなたに会えて幸せでした。おかげさまで、可愛い子供にも恵まれました。健康に育ててくれました。私の仕事も順調に行きました。もっと、もっと仲良くしておけば良かったね。2人だけでゆっくり温泉に行きたかったね。
子供達へ、愛する子供達へ。一人前になるまで育てられなくてごめんね。私の医師としての技術を伝えることができず残念です。私が治すことができなかった難治性の病気を、君たちが、私を乗り越える医療技術を身につけて治してほしい。
母よ、姉よ、兄よ。今まで育ててくれてありがとう。
友へ。一緒に仲良く遊んでくれてありがとう。
自分に。こんなに早死にするなんてバカだよ。自分の実力以上のことをやってきた罰だよ。実力相応の仕事をしておけば、もっと楽しく生きられたのに、ほんとにバカだよ。
10分ほど休むと、薬も少し効いてきて、なんとか仕事できるようになりました。そしてこの日も無事に終わりました。
ぽっくり逝くことがあるかもしれません。しかし、あと20年は生きたいと思います。そして、もっと違った遺言状をのこしたいと思います。 |
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