2024年12月5日号
「今週の談話」
蓑虫が最近減ったと俳句の会で話題になりました。
そう言えばかつて医院の入り口の楠木に無数の蓑虫が垂れ下がり気持ち悪くなったことがありました。そのことを庭師に言うと、しっかりと消毒をしてくれるようになったせいか蓑虫は全然見かけなくなりました。
先日医院の壁に蓑虫がいるのを発見しました。ずりずりと動きながら移動していました。その後蓑虫はどこに行ったのだろうと庭を探してみましたが見つかりません。
探索しているときに蓑虫の巣らしきものを発見しましたが、その中に蓑虫はいませんでした。
蓑虫の利用価値について、ネット検索してみました。
虫の中にはシルク(絹糸)を作るものが10万種もあるのだそうです。その中でも蓑虫の作るシルクが最も利用価値があると言われています。蓑虫は枯葉をシルクで貼り付けて巣を作っていますが、垂れ下がる糸もそのシルクで強力です。自動車のプラスチック部品の補強などに利用できるのではないかと産業界で注目を集めています。プラスチックに蓑虫のシルクを混ぜると強度と耐熱性が向上することが分かったそうです。また、蓑虫のシルクは大量に生産することが可能と言われています。
厄介者と思われていた蓑虫は産業界のSDGSに活用され、羽ばたいていくのでしょうか。
蓑虫を庭で探している時、偶然イナゴが鵙(モズ)の早贄として枝に突き刺されているのを発見しました。こんな大きなものまで早贄にするなんてびっくりです。
モズの早贄には、次のような特徴があるそうです。
繁殖期でない時期にオスが作り、春の繁殖期が始まるまでに食べ尽くします。冬の保存食として機能します。繁殖期に雄が雌に求愛する際、より魅力的にさえずって「モテる」ための栄養食の役割を担っています。モズの早贄を作る時期は、おもに10~12月で、気温もまだ暖かく、餌となる生物をたくさん捕えやすい時期です。毎月約40個の早贄をせっせと作り、計120個もの早贄を貯えることが知られています。
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私は耳鼻咽喉科の専門医ですが、東洋医学の専門医でもあります。その関係で様々な病気に対して相談を受けます。
先日は様々な病状を持つ女性から、最近の気分不良の原因は更年期症状ではないかと相談を受けました。なるほど年齢的にもそうだし、頭痛、めまい、肩こり、のぼせなどがあることから、更年期症状が疑われます。更年期症状に使う漢方薬を希望されたため、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を出しました。その後何を思ったか、婦人科に相談して女性ホルモン剤をもらい飲みだしたそうです。
その後しばらくして、体調が悪く立てない、動けないと電話してきました。そして、また相談に来ました。食欲不振と意欲の低下があり、仕事に行くことができないと心配そうにしています。
「どうすればいいの、元気になる方法はないの、教えて」と懇願しています。
「そうだな、僕のちょっとしたカンなのだけど、その女性ホルモン剤が合っていないような気がする、一週間でもやめてみたら」と言いました。そして翌日、
「治りました。元気で仕事に行けます。先生のアドバイスが当たりました」と電話をもらいました。なぜか分かりませんが、彼女には女性ホルモンを補充するほど、女性ホルモンが低下してはいなかったのではないかと推測したのが正解だったようです。結婚も妊娠も経験のない方でしたので、一般の女性とはホルモンの動態が異なっているのかも知れません。
薬はその人に合ったり合わなかったりします。
薬のせいでめまいが生じることなどはよくあることです。
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新しく植え替えたモチノキが赤い実をつけてくれました。
診察室から駐車場が見える一番メインの窓から見える位置に植えてもらいました。
花が少ない季節に豆のような赤い実が鈴なりに付きます。
蓑虫は夢の国へと旅に出る