ほめ上手〜倉田先生
「今から行きたいのですが、間に合いますか?」
と、ガラガラ声で尾道大学副学長の倉田 先生から電話がありました。
「どうしたのですか、声が嗄(か)すれていますね?」
「風邪をひいて、三日目で、声が出にくくなったのですよ。診療時間に間に合いますか?」
「お待ちしていますので、ゆっくりお出かけください」
「良かった、あなたに診てもらえるなんて、私、幸せ」
十分に閉院時間に間に合って来られました。
「早かったですね」
「良かった、良かった。あなたに診てもらえて、私、幸せ」
早速、倉田先生の鼻から咽喉を喉頭ファイバーで診ました。
「口で楽に息をしてください」とスタッフが声をかけますと、
「あなたは、優しいね、ありがとう」とスタッフをほめてくれました。
鼻水は膿性で、鼻粘膜が腫れて鼻はかなりつまっていました。咽喉を診ると、粘膜の発赤、腫脹と膿性分泌物が見られました。声帯も腫れています。左の声帯には分泌物がからんでいます。モニターに写った鼻と咽喉を見ながら説明しました。
「風邪によって粘膜が荒れていますね。分泌物も多く、声嗄れの原因になっています。左の声帯は分泌物ではっきりは見えません。明日、もう一回確認しましょうか?」
と言ったあとに、薬の選択、咽喉の治療をしました。
「ありがとう。良かった、良かった。これで、すぐに良くなる」
と感謝の言葉を残して帰っていかれました。さわやかな空気が診察室にあふれていました。
倉田先生は感謝の言葉を忘れない天才です。講演会でも、お酒を飲む宴会でも、ゴルフに行っても、 いつも誰かをほめています。倉田先生の周りにはいつも人が集まり、楽しい笑いと和やかな雰囲気が満ちあふれています。
人をけなすことは簡単です。しかし、まわりには気まずい空気が残ります。人をほめることは、慣れていないと難しい。ほめ慣れていないと、とっさには感謝の言葉が出てきません。
上手に人をほめる人は、特上におしゃれな人だと思います。
(2005年5月16日号から)
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