新妻聖子さん
新妻聖子さんに出会ったのは、青森の学会の帰路に東京に立ち寄り、偶然「ミス・サイゴン」を見たときでした。ミュージカルなど見たことがなかった私が、この舞台を見てはじめて新妻聖子さんを知りました。
「ミス・サイゴン」は素晴らしい出来ばえでした。皆様がエネルギッシュに歌い踊り、全てが私には新鮮でした。
その中でも、新妻聖子さんの歌声はいつまでも私のこころに残りました。小さいからだから生まれる、帝国劇場の隅々まで響きわたる声は、わたしを心地良くさせました。
もう一度新妻聖子さんの歌声を聞きたいと思い、連休を利用して「レ・ミゼラブル」を見に行きました。
6列目の特上の席から、新妻聖子さんの出番を今か今かと待っていました。今回は見逃してはなるかとばかりに、バードウォッチング用のニコンの双眼鏡を持って参りました。新妻聖子さんはやっと後半に出てこられました。わたしの胸は高鳴りました。双眼鏡を取り出し、懸命に見ました。
やはり素晴らしい、新妻聖子さんの歌声は素晴らしい。美しい声は朗々と響き渡り、誰もがうっとりと聞きほれていました。わたしの後ろの席の方は、新妻聖子さんの歌が終わると思わず「ウッ」と声を飲み込んでいました。
わたしはこの時発見しました。 他の方々の歌声はまるで楽器が奏でる音です。無機質的に響く乾いた音に聞こえます。しかし、新妻聖子さんの歌声は柔らかい、ぬくもりのある人の声です。楽器ではありません。
新妻聖子さんの歌声は、天から舞い降りたる、天使の歌声かと思われます。この心地よい響きは母親の胎内で聞いた歌声のようにも聞こえます。美しさと悲しさ、暖かさと豊かさ、なんとも形容のしがたい感動が胸に湧いてきます。眼には涙がうっすらとにじんできます。なぜか、わけも無く 、マヘリア・ジャクソンの顔が浮かんできます。ゴスペルでもないのに、なぜゴスペルに聞こえてくるのでしょうか。
鼓膜から耳小骨を経て、新妻聖子さんの歌声は内耳有毛細胞を美しくなびかせ、大脳聴覚野に届きます。神経細胞の一つ一つを、気持ちよく刺激します。
双眼鏡を覗いていると、顔の豊かな表情、指先の一つ一つの動きが鮮明に近くで見ることができました。歌声だけでなく、からだ全体を使った細かい表現力に感服いたしました。
早速、ファンクラブに入りました。自由に使ってよいと書かれていましたので、新妻聖子さんの写真を掲示させていただきます。
おからだを大切になさって、いつまでも美しい歌姫でいてください。

(2005年5月2日・9日合併号から)
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