2005年4月18日号
「今週の談話」
なかにし礼氏の「黄昏(たそがれ)に歌え」(朝日新聞刊)が出版されました。作詞家として光りと輝きを得る過程を描いた自伝的小説です。実名で石原裕次郎や美空ひばりまで登場してきます。
小説は当然面白かったのですが、びっくりする書評を目にしました。久世光彦氏の書評(週刊朝日)には驚かされました。
「街に<不良>がこっそり棲(す)んでいた時代があった。少年のようにも見えたが、少年にしては横顔が疲れていた。彼の傍らにはかならず女がいて、彼が煙草を咥(くわ)えると、遠慮がちに舶来のライターで火を点けた。爪が赤かった。西日が漣(さざなみ)のように揺れる畳も赤かった。そんな淀んだ空気からは、歌ぐらいしか生まれてこなかった」
「彼の歌は次々とヒットしたが、因果なことにその<恍惚>の背中には、いつだって薄暗い<不安>が影みたいに貼り付いていた。<不良>から足が洗えないのだ」
「なかにし礼がいまでも色っぽいのは、この溜息のような不安のせいだ。だから健康ななかにし礼や、前向きのなかにし礼なんか、私には考えられない。彼の不安は含羞(はじら)いながら、彼の小説の中からも顔を覗(のぞ)かせる」
「なんだか知らないが、もうたくさんだーという街であり、時代だった。思い出しても懐かしくなんかない。目を瞑(つむ)ると、スレートの屋根を打つ雨の音だけが聞こえる。だが皮肉なことに、私の色っぽい男たちは、みんなそんな街の落とし子だったような気がする」
「彼らに不安と安らぎと、二つながら与えた<あの時代>は、いったい何だったのだろう」
書評というより、なかにし礼氏の小説を読んで、共有した時代を懐かしむエッセイです。作家は意のままにこのような洒落た文章をよく書けるものだと感心しました。
本を読むのも楽しいですが、上手に書かれた書評を読むのもまた面白いものです。
NHKの「週刊ブックレビュー」は楽しい書評番組です。3人の読み人が3冊を携え、それぞれの本を紹介し、批評を加えます。中々センスのいい番組です。
作家のものを書く能力には本当に感心します。じょうずにものを書き、じょうずに話す人たちの才能には嫉妬すら感じます。
「野に花、山に鳥」
ドウダンツツジの可憐な花が咲き始めました。
白い小さい釣鐘状の花は、見れば見るほど可愛い。
「今週の病気」
スギ花粉症が終わりに近づきました。ヒノキ花粉が今は多くなっています。5月の連休頃まで飛びそうです。
まだインフルエンザが少し残っています。 |