2005年5月16日号
「今週の談話」
「今から行きたいのですが、間に合いますか?」
と、ガラガラ声でO大学副学長のK先生から電話がありました。
「どうしたのですか、声が嗄(か)すれていますね?」
「風邪をひいて、三日目で、声が出にくくなったのですよ。診療時間に間に合いますか?良かった、あなたに診てもらえるなんて、私、幸せ」
「お待ちしていますので、ゆっくりお出かけください」
十分に閉院時間に間に合って来られました。
「早かったですね」
「良かった、良かった。あなたに診てもらえて、私、幸せ」
早速、K先生の鼻から咽喉を喉頭ファイバーで診ました。
「口で楽に息をしてください」とスタッフが声をかけますと、
「あなたは、優しいね、ありがとう」とスタッフをほめてくれました。
鼻水は膿性で、鼻粘膜が腫れて鼻はかなりつまっていました。咽喉を診ると、粘膜の発赤、腫脹と膿性分泌物が見られました。声帯も腫れています。左の声帯には分泌物がからんでいます。モニターに写った鼻と咽喉を見ながら説明しました。
「風邪によって粘膜が荒れていますね。分泌物も多く、声嗄れの原因になっています。左の声帯は分泌物ではっきりは見えません。明日でも、もう一回確認しましょうか?」
と言ったあとに、薬の選択、咽喉の治療をしました。
「ありがとう。良かった、良かった。これで、すぐに良くなる」
と感謝の言葉を残して帰っていかれました。さわやかな空気が診察室にあふれていました。
K先生は感謝の言葉を忘れない天才です。講演会でも、お酒を飲む宴会でも、ゴルフに行っても、いつも誰かをほめています。K先生の周りにはいつも人が集まり、楽しい笑いと和やかな雰囲気が満ちあふれています。
人をけなすことは簡単です。しかし、まわりには気まずい空気が残ります。人をほめることは、慣れていないと難しい。ほめ慣れていないと、とっさには感謝の言葉が出てきません。
上手に人をほめる人は、特上におしゃれな人だと思います。
「野に花、山に鳥」
エゴノキの花が咲き始めました。ピンクと白の花があります。花は新枝の先から垂れ下がります。エゴの名は実の皮を食べると、えぐいことから来ているとか。
「今週の患者さん」
のどが痛くて食事もできないといって、90歳の男性が、施設のスタッフに連れられて、来られました。
口を開けて、「アー、ウー」と言っています。
開いたままになっている咽喉を覗(のぞ)き込むと、何かがひっかかっています。
「これは大変だ」
慌てて、確実に物をつかめる鉗子を取ってきて、しっかり掴んで咽喉から取り出しました。
何と、咽喉に深く入り込んでいたのは、入れ歯です。
これは痛い。これで食事できるはずが有りません。
どうして咽喉の下まで落ちたのでしょうか?
まさか、食事を介助していたスタッフが、食べ物といっしょに入れ歯を押し込んだのでしょうか?
気をつけましょう。
|