週刊 談話室  
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2012年4月12日号

「今週の談話」

愛媛CATV「八木健の俳句」に出演しました。
放映毎週日曜の正午から1時間です。
4月1日、8日、15日22日に放送されます。
収録のときに色々と意見を言いたかったのですが、番組では半分も言えませんでした。感想を書きます。

提出された俳句です。
1.雨三日日和四日や牡丹の芽
2.花粉症檜の父と杉の母
3.やっぱりな祖父母も着飾る初節句
4.くちあけて空気を食べる春の鯉
5.春なれや電話ひとつで決まる旅
6.春の海目の中に飼う大きな蚊
7.剪定に切り落とされし未来なり
8.喉ぼとけ見せて白酒花に酌む

「雨三日日和四日や牡丹の芽」
ベテランの人の作品です。ベテランの女性2人に選ばれました。
「雨三日日和四日」の表現がいいと評価されました。
しかし、私の印象は違いました。「雨三日日和四日」は天気の経過説明で瞬間を切り取る俳句には適切ではないと思いました。
雨が降ったから「牡丹の芽」が出てきたという報告俳句に終わっています。
いわゆる写生俳句はこのような報告俳句が多く、内容が乏しくなります。

「花粉症檜の父と杉の母」
若い人の作品です。スギ花粉症とヒノキ花粉症をユーモラスに詠んでいます。
でも本当はスギ花粉症とイネ科花粉症でしょう。
ヒノキ花粉症だけの人はまれだからです。
「ウルトラの父、ウルトラの母」を思い出します。

「やっぱりな祖父母も着飾る初節句」
若い人の作品です。これでは面白みに欠けます。
「やっぱりな祖父母着飾る初節句」にすると華やかさと賑わいがでると思います。

「くちあけて空気を食べる春の鯉」
八木健さんの作品。ベテランの男性2人が選びました。
「空気を食べる」という表現が面白いとの評がでました。
一方で、鯉のぼりの俳句のようだという批評もありました。
わたしはこの句は最高傑作だと思いました。
「くちあけて」「空気」を欲しがっているのはまさにひん死の鯉です。
いまだかって死にかけの鯉を詠んだ俳句をみたことがありません。
そういう意味なら最高傑作です。
しかし、元気のいい鯉を詠んだのなら「くちあけて」を「ぱくぱくと」にしなければおかしい。

「春なれや電話ひとつで決まる旅」
ベテランの人の作品です。私と若い女性が選びました。
春が来た感じは出ていますが、「で」は強く濁った表現なので良くありません。
自然に「決まる旅」なのか、相談して「決める旅」なのかがよくわかりません。
すると作者は「旅行会社に電話したらすぐに決まった」とのこと。
意外にがっかりした句でした。

「春の海目の中に飼う大きな蚊」
これは私の句です。飛蚊症です。
色々議論していただきましたが、飛蚊症を知らない人、目の解剖図を知らない人が多く、議論が空回りしました。
硝子体の中にごみが浮かんで泳いでいる様子です。
「春の海」は硝子体のことです。私にしか分からない迷惑な俳句でした。

「剪定に切り落とされし未来なり」
ベテランの人の作品。若い男性が選びました。
「切り落とされた」「未来」を悔やんでいる様子が見えるとの評です。
ここに「未来」を持ってきたのは、観念的で良くありません。
切り取った枝は「未来」ではなく現在か過去の枝です。
「子供の未来の芽を摘む」という常套用語を言いたいのでしょうが、これでは平凡です。
「未来」より「過去」にするとぐっとおもしろくなります。
興味深い句に変化します。

「喉ぼとけ見せて白酒花に酌む」
ベテランの人の作品を八木さんが選ばれました。
八木さんは「喉ぼとけを見せて酌む」ことが面白いと評しましたが、「喉ぼとけ」「白酒」「花」「酌む」と言いたいことを詰め込み過ぎていて良くないと思いました。
「白酒」はひな祭りであり「花」はさくらで季が重なっています。
もっと省略し整理して欲しいと思いました。

今回は参加者は主宰クラスの人が多かったのですが、俳句は平凡でした。
子規・虚子の写生俳句に終わっていて、さらに写生を深める努力が見られませんでした。
とくにベテランの人に見られたのですが、「瞬間を切り取ること」、「余分なことは省略すること」、「見方を思い切って変えてみる」などの俳句の基本的作業がゆるかったことが残念でした。

南北に長き列島花日和



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