「声は聞こえるのに、何を言っているのかわからないのですよ。何とかなりませんか」
 補聴器の調整にやってくるTさんが、またいつもと同じ質問をしています。脳細胞は、年とともに衰えてゆきます。聴力に関する細胞も数が減ってゆきます。言葉を理解できなくなるのもこのせいです。語学力が低いと外国語もゆっくり話してもらわないとわかりにくいのと同じことです。脳細胞の退化で聴きとる力も弱くなってきているのです。
 脳の老化によって「ぼけ」が始まりますが、「ぼけ」の代名詞として有名なアルツハイマー病があります。ものをちょっと忘れるくらいなことは生理的な老化現象ですが、アルツハイマー病になると記憶障害の他に被害妄想も生じるようになります。「誰かが、自分の財布を取った」などと思い込み、まわりの人を疑いはじめます。アルツハイマー病は、アルミニウム鍋が原因とも考えられていますが、ご存じでしょうか。脳の中で鉄分が大量に消費されていますが、脳の中で鉄分が不足すると、アルミニウムがある蛋白質とくっついて脳の中に侵入します。侵入したアルミニウムは、脳内の神経細胞を破壊します。脳細胞が破壊されて「ぼけ」が生じるのです。アルミニウム鍋のほか、水道水の中にもアルミニウムが含まれています。アルミニウムの摂取をひかえ、鉄分を多くとると「ぼけ」防止となります。レバーなど鉄分を多く含む食品をよく食べ、アルミニウム鍋を使わないようにしましょう。
 漢方薬でもアルツハイマー病に効く薬があります。主に更年期障害や不妊症、月経不順によく効く当帰芍薬散です。これを飲むと、アルツハイマー病の、今は昼か夜か、自分が今どこにいるか、相手が誰かなどがわからなくなる見当識の低下を改善できるそうです。「ぼけ」には、アルツハイマー病の他に動脈硬化によるものもあります。こちらの方には、釣藤散黄連解毒湯が効きます。
「ぼけ」ないために気をつけることがあります。橋爪10カ条というのをご紹介します。

 @タバコ、酒はひかえ目に。
 A高血圧、糖尿病、肥満などに注意する。
 B早歩きや散歩などの運動をする。
 Cバランスのよい食事をする。
 D孤独を避ける。人との触れ合いを大切に。
 E打ち込める趣味をもって生き甲斐を作る。
 F規則正しい生活をする。
 G日記、手紙、俳句などの文章を書く。
 H気配りをして頭を働かせる。
 I新しい活動に挑戦してリフレッシュする。

 このように生活に気をつけて、脳の血液の流れをよくして「ぼけ」を防止しましょう。
(1996年10月)


BACK | NEXT