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| 35歳の女性が、「耳鳴りがして夜も寝られません」、「チリチリ鳴るんです」、「時々止まるんですけど」と来院しました。 鼓膜を見ても何も異常はなく、聴力の低下もないため、一連の耳鳴りの治療をし、耳鳴りの薬を出して帰ってもらいました。しかし、何かもやもやした気持ちが残っています。 次の日、「まだ、おかしいんです」と言われ、「ン!」と思い、念のため鼓膜、中耳腔を入念に観察しました。「やっぱり耳の中には異状はありませんけどネ」と、自信たっぷり大きな声で説明して鼓膜から目を離す瞬間、何かが鼓膜の隅で動くのが見えました。 「アッ、ダニだ!」 何と、ダニが鼓膜の上を散歩しているのです。チリチリ音はダニの歩く音、音が消える時は、ダニが鼓膜から外耳道に出た時だとわかりました。早速、綿棒の先に軟膏をつけ、除去しました。 このご婦人は、ネコと犬を屋内で飼っていました。また、最近愛犬が骨折をしたため、可哀想で添い寝をしていたそうです。ペットを飼っていらっしゃる方はご注意下さい。この経験から、「チリチリ音」は“ダニ”と頭の中にしっかりインプットされました。6カ月後、38歳の女性が同じように、「耳がチリチリ鳴ります」と言ってきました。この時はもう「名医」になっていますから、「ペットをいつも抱いているでしょう」「はい、ネコ2匹と犬1匹です」、「時々音が消えるでしょう」「はい」と会話しながら、「名医」らしく平然と鼓膜を観察し、ダニを見つけて取り出し、「ダニがいましたよ、どうです治ったでしょう」と胸を張って説明しました。 耳鳴りは、主に鼓膜の上の異物(耳アカなど)、中耳腔内の貯留液、内耳の障害などによって生じますが、内耳性のものは、治療がかなり困難です。一般的な薬物療法の他、キシロカイン療法、鼓室内ステロイド注入療法などがあり、それぞれに治療効果があります。東洋医学的手法では、つぼ刺激療法、漢方薬があります。漢方薬では、五行説により、耳と腎は関係が深く、このことから八味地黄丸、牛車腎気丸を使うことがあります。また、気・血・水の考えにより苓桂朮甘湯、五苓散などの他、柴胡加竜骨牡蛎湯、釣藤散、加味逍遥散などが有効なこともあります。 (1993年4月) |
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