"東風吹かば 匂いおこせよ梅の花
             主なきとて春な忘れそ"

 菅原道真の有名な歌ですが、春先に吹く東風に乗って、また、スギ花粉が飛んでいます。今年は昨年よりも花粉の量が多いそうですのでご注意ください。

 高松塚古墳の壁画には、東壁に青龍、西壁に白虎、北壁に玄武の三神が描かれています。漢方薬に小青竜湯という薬がありますが、この青龍は、東を意味します。つまり、小青竜湯は、東風の吹く春先に起きる病気(かぜ、花粉症、喘息)によく効くようにつくられているそうです。中国は2千年も前から花粉症もあったのでしょうか。面白いですね。なお、白虎は白虎加人参湯に、玄武は真武湯にそれぞれ使われています。
花粉症に効く漢方薬いろいろ

 花粉症に効く漢方薬には、小青竜湯の他、葛根湯、麻黄附子細辛湯、苓甘姜味辛夏仁湯などがあり、鼻の状態をみて処方します。抗アレルギー薬には、眠気、脱力感の生じるものが多く、使いにくいときがありますが、漢方薬にはこういう副作用もみられず安心です。
 花粉症(鼻アレルギー)の治療にはその他、注射(皮下注射)による方法、鼻の粘膜にレーザーを照射する方法などいろいろあります。
 花粉症には、スギ(2月〜4月)、カモガヤ(イネ科の植物、5月〜7月)、ブタクサ(キク科の植物、8月〜10月)などがあります。1年中花粉症に悩んでいる人もいます。鼻がむずむず、眼が痒くなったら花粉症かもしれませんよ。あなたは大丈夫ですか?
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 仕事熱心で働き盛りのHさんが、今年も鼻をぐずぐず言わせながらやって来ました。
 「先生、眠くないのを下さいヨ」
こういう人には、まず小青竜湯を試してみます。「症状が激しい時はコレも使ってね」と、抗アレルギー薬も念のため出しておきます。また、点鼻液、点眼液も忘れずに処方してあげ、鼻の症状を改善させる皮下注射をして治療は終わります。やれやれという顔をして、Hさんは診察室を出てゆきました。

(1993年3月)

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