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| 落語の枕に「葛根湯医者」というのがあります。「先生、頭が痛いんですが」「ああ、頭痛だな、葛根湯をお上がり」「おなかが痛いんですが」「腹痛だな、葛根湯をお上がり」という調子で、足が痛くとも目が悪くとも、どんな患者にも葛根湯を飲ませ、しまいに、付き添いにも「葛根湯をお上がり」とやる、やぶ医者の話です。これは、逆に言えば、葛根湯が何にでも効く万能薬であるという証なのです。 葛根湯は、私の1番好きな漢方薬です。朝起きてのどが痛いと思えばすぐ一服。仕事中に肩がこってきたら、また、一服。外出していて、背中がぞくぞくとしてきたらすぐに一服。このようにかぜの前兆があれば必ずすぐにのみ、お陰でこの3〜4年かぜをひいたことがありません。葛根湯には身体を温めたり、肩こりを取る働きがありますので、ドライブの前とか、早朝のゴルフの前などにも飲んで出かけます。 葛根湯は、葛根、麻黄、桂枝、芍薬、甘草、大棗、生姜の7つの生薬から作られています。葛根には発汗解熱作用があり、頭痛、筋肉痛も取ります。麻黄と桂枝で身体を温めたり、発汗解熱を行います。芍薬と甘草には筋肉痛を取る作用があります。また、全体として身体を温める作用をもっています。 かぜをひくと首筋から肩にかけてぞくぞくした寒さを感じ、首筋がこわばり、頭痛を覚えます。こんなかぜの初期には葛根湯がよく効きます。葛根湯を飲むと身体が温まり、血液循環がよくなり、汗が出てかぜが治ってしまうのです。ある程度の体力のある人には大抵効きます。かぜ薬の漢方薬としてその他に、体力のやや弱い人に向いている桂枝湯、かぜがやや進んでしまうと麻黄湯、かぜの極期に小柴胡湯、治りきらずぐずついているかぜに柴胡桂枝湯、老人のかぜに麻黄附子細辛湯、真武湯などがあります。しかし、かぜの極期には、抗生物質や解熱消炎鎮痛剤はもちろん必要です。 今朝、庭の片隅に青蛙が1匹、冷たい風に震えていました。思わず葛根湯を一服飲ませてやりたくなりました。 (1993年10月)
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