(2012年7月26日掲載)
「皆様の疑問点に対して」
①加味帰脾湯について。
この漢方薬は精神安定作用が主です、耳管に対しては効果は少ないような気がします。
開放症状で気分が塞いだときは、気分が良くなるため、結果的には開放症が治る人もいるようです。
ストレスがあれば、耳管の痙攣や緊張が生じ、それが原因で開放症状がでることがあります。
そのような人には結果的に効果があります。精神安定剤が効果的という人はこれが原因の開放症です。
②原因について。
- 急激な体重減少も原因の一つですが、体重が戻っても開放症が治らないこともあるため、体重減が耳管の痩せにつながっていないのかもしれません。
痩せることによって、耳管粘膜の水分が減少することが原因のような気がします。水分保持力の改善が一番たいせつなことだと思います。
ちなみに生理食塩水を垂らせば、一時的に症状が改善します。 - 体重減少が原因で耳管開放症になり、パニック症状を生じ、立ち上がることもできなくなった20才の女性が来られました。私の治療で数ヶ月で完治しました。
- 中耳炎後に開放症になる人もいます。中耳から耳管が急激に腫れることが中耳炎ですが、治療後に粘膜の繊毛細胞が脱落するため、開放症状になります。
- 鼻風邪のあとから開放症になる人は、同じことが原因になります。
- 高齢者は分泌物の分泌能が低下します。からだが乾いています。これが原因で開放症になっている高齢者はたくさんいます。
- ストレス、緊張状態が続くと喉が乾きますが、同時に耳管が乾く人もいます。これにより開放症が生じることも考えられます。
- 耳管機能検査、耳管通気などにて異常が見られないのに、耳管開放症と訴える人もいます。症状は耳管開放症に似ているのですが、開放症ではないので治療しても良くなりません。耳管開放症思い込み症と名づけていますが、病態はわかりません。
③上咽頭の治療(Bスポット療法)について。
上咽頭が腫れると、耳管の周囲も腫れます。耳管狭窄になります。耳管狭窄であればこの治療が効果的です。
耳管狭窄症によりうつ病状態になった30才の男性が来られました。上咽頭の治療と通気治療で治りました。
開放症と狭窄症は症状が似ているため注意が必要です。
④鼓膜チューブについて。
耳管狭窄と耳管開放が交互に来る人がいます。このような方は耳管の気圧調節ができなくなっています。
このタイプの人には鼓膜チューブは効果があります。
長いあいだ耳閉感が治らず、うつ状態で外出できなかった人が十全大補湯、耳管内シロップ噴霧、耳管チューブの治療で海外旅行に行けるまで改善しました。
⑤耳管通気について。
耳鼻科医ならだれでも自由に通気治療ができると思っていたのですが、患者さんの感想を聞くと痛み無く通気治療できる耳鼻科医は少ないそうです。 これだけは、耳鼻科医を選んでください。
⑥耳管機能検査
この検査機を置いている医療機関は少ないです。
これが無いと、耳管狭窄症と耳管開放症の診断はむつかしいです。
ただしほかの方法で診断することも可能です。
⑦その他の漢方薬
漢方薬は応用範囲が広いため、それぞれ効果的なものがあります。
補中益気湯はたるんだ耳管を締めることができますので、効く人もいます。
柴胡加竜骨牡蠣湯は気分を良くします。結果的に効く人もいます。
その他たくさんあります。自分に合うものを選んでください。
⑧その他
病気はなんでも同じですが、自分に適した治療法を見つけ、信じて治療を続けることが大切です。
耳管開放症は精神状態が微妙に関係しているため、病態が複雑に見えます。
誰にでも100%効く治療はありません。
より適した治療法を探し、少しでも症状を軽減させてください。
遠くの耳鼻科医が良く見えることもあるでしょうが、近くの信頼できる耳鼻科医が一番です。

