2024年10月14日号
「今週の談話」
俳句仲間から句会のあとで、ジャズ演奏家らの即興演奏付きの無声映画があるので見に行かないかと誘われました。面白そうだったので急遽参加しました。
1927年制作の無声映画にライブ演奏を聞きながら観るという企画の作品をシネマルナティックという客席数160の小さな劇場で鑑賞しました。
今回観たのは「サンライズ」です。第1回アカデミー賞、第1回キネマ旬報賞を獲得していることでも有名な作品でした。無声映画と言っても字幕がついているので、普通の洋画を見るのと変わりがありません。特徴は古い映画をライブ演奏付きでみるという楽しみ方です。
この日はなんと坂田明氏のアルトサックス・クラリネット、勝井祐二氏のエレクトリックバイオリン、武田理沙氏のエレクトロニクス(エレクトーン)の演奏でした。
田舎の幸せな夫婦の間に小悪魔的な女が現れ、その誘惑に悩みながら結局は男がその誘惑に打ち勝って、夫婦の愛を取り戻すという単純明快なドラマです。今はもう見飽きた定番ドラマですが、話はドラマティックに展開します。ドラマの展開に合わせて演奏が最初から最後まで続くため飽きることがありません。
天使のような奥さんのジャネット・ゲイナー、筋肉的な農夫のジョージ・オブライエン、その夫に近寄ってだまそうとする都会女のマーガレット・リビングストン。ある日から奥さんと赤ん坊がいるにも関わらず、夫は都会女に誘惑され惹かれていきます。
この現実逃避は我々にもよく見られることです。女は簡単に「私の夫になってよ。あんな女殺しちゃってさ」と言い、夫はその言葉に情けなく支配されてしまいます。この簡単さに違和感を感じますが、それは先を急ぐ映画の展開なので、許せます。
都会女にそそのかされて夫は愛する妻を殺そうとしますが、それをどうしても実行できず、それを契機に逆に妻への愛に目覚めるという、急展開する夫婦愛の回帰が微笑ましい。
ラストの夕陽を背景に髪をといた「天使」の寝顔がとても美しい。結局は、試練を越える夫婦愛の物語で、ハッピーエンドで安堵しました。最初から最後まで即興演奏をしてくれたミュージシャンの熱演に感激しました。
ミジンコ研究家として有名な生物学者の一面もある坂田明さんのサックスを久しぶりに聞きました。幸せな至福の時間でした。
*
秋になれば庭に咲き始めるのが秋明菊です。
白い清楚な花で人気があります。
鉢に植えていた花が実をつけ、種が庭に落ちて毎年花を咲かせるようになりました。
点々と白点々と秋明菊