2025年6月22日号
「今週の談話」
瀬戸内海を隔てた他県から来られた方です。
耳の音がワーンと反響して聞こえる、耳が詰まった感じがするなどの症状があり、耳鼻咽喉科を数軒回っても改善せず、最後の耳鼻咽喉科で私の医院を紹介されたそうです。耳管開放症と考えられるので、この病気に詳しい久我耳鼻咽喉科に行ってみなさいと私の医院を紹介されたそうです。
聴力検査で異常はなく、鼓膜がペコペコ動くこともなく、耳管機能検査をしてみると軽度の耳管開放症の結果でした。しかし、機械に全て頼っても間違いはあるため、念のために耳管通気をしてみました。耳管開放症ならゴーゴー音を立てて通気音が聞こえるはずです。いわゆる通り過ぎる音が聞こえてくると耳管開放症と判断できます。通気音が聞こえにくいと耳管が詰まっていることになるので耳管狭窄症です。
耳管開放症も耳管狭窄症も耳閉感として表現される点においては区別がつきません。耳管通気してみて通り過ぎれば耳管開放症、詰まって通りにくいと耳管狭窄症です。
この方に耳管通気をしてみると、何と全く空気が抜けません。これからは耳管狭窄症と判断するしかありません。しかし、耳管機能検査では耳管開放症のグラフが描かれています。耳管通気はうまく耳管開口部に通気管が入らないこともあるため、これだけでは判断できないこともあります。何回かしてやっと通るということもあるからです。今回は耳管開放症だけど、耳管通気はうまくいっていないと考える方がいいと判断して耳管開放症の治療を行いました。
しかし、最近の耳鼻咽喉科医師は耳管通気をしていないようです。この方は、今まで行った医院では耳管機能検査も耳管通気もしたことがないと言っていました。これにはびっくりしました。耳管狭窄症も耳管開放症もこの耳管通気は必要不可欠と私は思っています。耳管通気をしなければ耳管狭窄症も耳管開放症も判断できません。まして、これができなければどちらの治療もできないのです。
他の耳鼻咽喉科では耳管狭窄症も耳管開放症も的確に治療できていないのはなぜだろうと前々から思っていましたが、大学病院を中心に最先端の治療を行いながら、なぜか耳管通気をほとんど行わなくなったため、この病気はまともに治療されていない理由がやっと分かりました。
治療方法にも時代の流れがあるようです。私は頑固にこの治療を行っていきます。

紫陽花や首へぽつりと水の精
