2025年7月6日号
「今週の談話」
話題の映画「国宝」を見に行きました。予想に反し高齢者よりも若者がたくさん見に来ていました。これは若者の間に何らかの反響が広く伝播しているような印象でした。
映画の面白さは、TVでも見られない非日常性、ある程度の暴力性と男女間の情念、
わくわくとする物語の見えない結末、そして進化する映像美と効果的な音楽などの相乗効果で決まります。この映画にはそれらが計算し尽くされていました。
歌舞伎は私にはそもそも退屈なものでしかありません。しかし、中には時々魅力的な場面が出てきます。この映画は歌舞伎の美しく魅力的な場面のみを徹底して取り上げています。若い人たちには歌舞伎が魅力的に映ったと思いますが、退屈な場面は切り捨てられていることを知っていてほしいです。
決して歌舞伎を啓蒙する映画ではなく、暴力団の親分の子供に生まれた人が、歌舞伎界のプリンスと葛藤を繰り返しながら、その天才的な演技力、演舞力を発揮して人間国宝にまで上り詰めるという成功物語です。われわれ観客は感情移入し、はらはらとしながら頑張れと応援したくなります。
久しぶりに上質の映画を見ました。大音量の効果音が物語を盛り上げていましたが、耳とか頭の疲労感が感じられないのは、極めてピュアな音で再現されていたのでしょう。音楽の進化が進んでいると感心しました。
映画館を出た後、カフェでひとり珈琲を飲んで帰りました。それぞれのシーンを思い出しながら、黒澤映画を見た後の興奮に似ていると思いました。夕日を眺め、珈琲を味わいながら。
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私たちは、聴診器を持っています。心音を聞いたり、呼吸音の雑音を聞いたりしているのですが、私が一番利用しているのは咳をしている方です。喘鳴がするかどうかを主に聞き取っています。喘息は最悪呼吸がしにくくなるので、ゼーゼー、ヒーヒーと言う音は聞き逃さないようにしています。最近は吸入器が進化していますので、喘息で重症化する人はみられなくなりました。
親しくなった子供さんには呼吸音を確認した後でときどき冗談に頭にも聴診器を当てて喜ばせます。母親は「何かおかしいですか」とびっくりして、気にされる方もいます。「うーん、天才の一歩手前ですね」と言って笑い合います。もちろん頭に聴診器を当てても何も情報は得られません。
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桔梗が咲き始めました。
ブルーが清々しい。
四角い箱のような蕾が、あるとき突然開きます。
何か宇宙からの交信が始まりそうでわくわくします。

桔梗咲く空に向かってなにか言う
「小石の芸術展」の募集要項が完成しました。
締め切りは9月6日です。皆さんの力作を今年もお待ちしています。
