2025年11月23日号
「今週の談話」
最近、熊が出没して人や果物を襲っていることが話題になっています。特に、熊が柿を狙って食べ荒らしているシーンはよく報道されています。
柿といえば奈良です。奈良に旅行に行くと至るところに柿の木があります。しかし、まだ熊が奈良に出たという報道はありません。
柿といえば「柿食えば鐘が鳴るなる法隆寺」の俳句です。法隆寺に行けばこの句碑を見ることができます。
司馬遼太郎の本を読んでいると、この俳句のエピソードが書かれていました。
この俳句の原型として夏目漱石が詠んだ「鐘撞けば銀杏散るなり建長寺」をあげていました。建長寺は鎌倉のお寺ですが、子規の俳句はこの俳句とよく似ています。
しかも、正岡子規が奈良を旅行した時は雨が降っていて、宿の係の女性に頼んで持ってきてもらった籠いっぱいの柿を食べていると鐘が鳴ったので、「どこのお寺の鐘の音ですか」と訊くと、係の女性が「東大寺の鐘です」と答えたそうです。
正岡子規は写実俳句を提唱していましたが、このような裏話があったのは面白いと思いました。がちがちの写実主義ではなく、時にはこのような遊びがあったことは楽しいです。今の時代の空想による俳句、言葉のパッチワーク風俳句は当たり前で何ら驚くことはありませんが、写実主義を唱えていた子規もこのような空想的創作を行っていたのです。写実だけの俳句は堅苦しく、平面的すぎです。
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最近経験したことですが、耳の治療に来られた方が、口の中も診てくださいとやや遠慮気味に言われました。奥歯の辺りに違和感があり、近くの歯科から紹介されて大病院の口腔外科で治療してもらっていますが治りませんと言われました。一年に数回受診していたので治療開始から10年になるそうです。放っておくと癌化するかもしれないと言われ、念のために組織検査をしましたが異常はなかったそうです。
その方の病変部を早速拝見しました。奥歯を囲むように粘膜の肥厚がみられましたが、特に重症の様子はなかったので「これは普通の歯肉炎ではないでしょうか、治療すれば数回で治ると思います」と言って腫れを取る治療をし、薬を塗りました。
三回目に治療をした数日後に「もう治りました、ありがとうございました」と言われました。
こう言うのは大変失礼になりますが、歯科医と耳鼻咽喉科医では残念ながら見る目も治療方法も異なるようです。
日ごろから歯の奥が腫れて痛く歯科の治療では治らないので治してくださいと言って来られる方はたくさんいらっしゃいます。
しかし、この方が10年も治療していて治らなかったとはびっくりです。治療はステロイド軟膏を塗るだけだったそうで、これにもびっくりです。
一般にステロイド軟膏は急性期の皮膚疾患などに使い、慢性化したものに使ってもあまり効果は見られず、逆に悪化することもあります。そうした傾向はアトピー性皮膚炎でよく見られます。

秋にはこの歌スイートキャロライン
