「先生、ありがとうございました。帰る時からもう、バッチリ治ってしまいました」
 ゴルフを終えた後、副支配人が近づいて来て、うれしそうに話してくれました。
 2週間前にゴルフに行った時に、ハナをつまらせ、苦しそうにしていた彼に、「花粉症ですか? 治療はしているのですか」と聞くと、「我慢しているのですが、もう限界です。明日、診てもらえますか」ということで治療を行いました。また、この日、付いてくれた若いキャディーさんも、受付の女性も花粉症に悩みながら、「薬は、眠くなるから飲まないのです」といって治療をしていませんでした。後日治療をしてあげ、2人とも楽になりました。
 今は、花粉症に対する治療薬も、治療法もずいぶんと進歩しています。上手に治療を行えば、快適な生活が送れます。
 抗アレルギー薬には、眠気などの副作用の少ない薬が多くなりましたが、漢方薬で治したいという方もいらっしゃいます。こういう人には、全身状態、鼻の粘膜の状態を参考にして薬を選びます。小青竜湯葛根湯加川辛麻黄附子細辛湯がよく用いられます。
 薬を使っても治りにくい場合もあります。こういう時は、病的粘膜を直接、電気凝固やレーザーで改善させる方法もあります。
 今年は、昨年の暑い夏の影響で、スギの花の生育が良く、花粉の量は多かったようで、はじめて花粉症になったという人も多く見受けられました。
 年末よりインフルエンザも流行しました。ずいぶんのどを痛める人が多く見られました。そして、治りにくいようでした。
 インフルエンザにかかった後で、鼻や耳が悪くなる人も多く、不思議と大人の人の中耳炎が多くみられました。そして、中耳炎もすぐには治らず、換気、排液を目的とした、鼓膜チューブを使用する機会も例年より多くありました。
 阪神大震災に続いてサリン事件が生じ、経済界の円の高騰を含め、平成の異変が相次いでいます。政治も混沌としていて、世の中、末期的症状がこれからも続くのでしょうか。
 私の家の庭の連翹の黄色い花が鮮やかに咲き、白いモクレンの花弁が春風にゆれています。なぜか今年は、まわりの花々、新緑、小鳥のさえずりが心にしみてきます。

(1995年4月)


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