8月6日、暑い夏が続いています。今日は「ヒロシマ原爆の日」で、今年はとくに50周年に当たります。そして、私の医院は「日曜当番医」の1日です。
 日曜当番医は、年に5回ほどあります。正直なところ、身体も気持ちも休みの日のリズムになっているので、今一つ乗り切れずに仕事に入ります。「暇ならいいナ」と内心思っています。しかし、一方でこの日はさまざまな病気の人が来られるので、それなりに新鮮な気持ちで診察する日でもあります。
 「熱が出ました」―こんな人は楽です。軽い咽頭炎でしたので定番の薬を出して終わりです。まず無難なスタートです。
 「足が痛くて歩けません」―おバァちゃんがご主人に抱きかかえられながら入って来られました。「ムムッ、これはやっかいだゾ」と思いながら、痛がるアキレス腱のあたりを触ってみると幸いにしてアキレス腱は切れてはいません。「歩くとものすごく痛いのです」―これは困ったと思案しながら、とりあえず針治療を行いました。三陰交、崑崙、足の三里などに施針して、歩いてもらうと―「アッ、痛くありません。治りました」と言いながら1人で歩いて帰られました。針治療は腰痛、五十肩、膝関節痛、坐骨神経痛などの他、夜泣きや月経痛などに効果があり、劇的に治ることもしばしばです。
 「子供が痛がり、全然食べないのです」―若いお母さんがおろおろしながら入って来られました。舌、口唇、口腔内に潰瘍が見られ、手に水泡様発疹が見られます。手足口病です。潰瘍の部位を処置してあげました。
 「左耳を痛がります」―3歳の男の子をお母さんが抱えて来ました。左耳は急性中耳炎で鼓膜は腫れ上がっています。右耳は滲出性中耳炎です。鼻を診ると、一見して蓄膿症です。
鼓膜切開したり、レントゲンを撮ったりと慌ただしい時間が過ぎます。こういう子供には十分な治療が必要で、それなりに説明にも時間がかかります。
 「左耳に水が入ったようです」と、30代の男性が顔をしかめて来られました。今年は暑い夏のせいか水泳でのトラブルがよく見受けられます。この人も、潜っていて、水圧で鼓膜を破っていました。
 「お腹が痛いのですが」と、50歳の男性が大きいお腹を抱えて座っています。便秘でガスが溜まり、痛みを生じているようです。胃痛に効く薬と、便秘に潤腸湯を処方しました。
 「海で足を切りました」―7歳の男の子が足の裏をカキで切り、カキの破片と砂が傷口に入っています。1個1個、破片と砂を取り十分に消毒をしました。
 「犬に手を咬まれました」―40代の女性が、飼い犬にパンくずをやろうとしたところ咬まれたとのこと。暑さのせいで犬も混乱したのでしょうか。狂犬病の恐れもないようでしたので、消毒と投薬で済みました。
 「腕が腫れて痛いのです」と、35歳の男性が野球のユニフォーム姿で来院しました。念のためレントゲンを撮ってみると骨折はなく、単なる打撲傷で安心です。
 「両耳が痛くなりました。飛行機から下りるとズキズキ痛み出しました」―24歳の女性が顔をしかめています。ハナかぜをひいて飛行機に乗ったため、気圧の関係で急性中耳炎になったのです。鼓膜の切開をしました。明日からはオーストラリアに行くそうですが、鼓膜を切開しているので痛みは少なくて済むでしょう。
 このようにいろいろな患者さんが来院され、休む間もなく、無事に当番医の役目を終えました。

(1995年8月)


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