「のどに髪の毛があるような変な感じがして取れません。舌の先もピリピリします」
中年の女性が何か苛立った感じで椅子に座っています。
「いつ頃からですか」
「もう、数週間前からです」
「かぜをひいた感じはありますか」
「いいえ」
のどをよく診てみても特に何もありません。首の周囲を圧迫すると、左側の肩から首すじにかけて異和感がみられました。また、腰を圧迫すると第五腰椎に痛みがみられました。
「腰は痛くないですか」
「朝起きる時に腰が重いです。ギックリ腰の経験もあります」
東洋医学的手法による経絡療法を行い、漢方薬を処方しました。3日後に来てもらった時には、
「のどに髪の毛があるような変な感じは取れました。舌の先のピリピリ感も、うすらぎました。腰も軽くなりました」と明るい顔です。
一般にのどの異和感を訴える人は多く、たいていはのどの炎症によるものなのですが、原因が確認できないこともかなりあります。原因がわからないと、たいていは精神的異常として精神安定剤で様子をみることが多いようです。しかし、こういう例では、首や腰を触ってみるとたいていは異常が見つかります。
「耳鼻科で肩や腰の治療をするのですか」と、よく不思議がられますが、一度治療をしてみると、肩や腰、そしてのどの異和感まで取れて喜んでもらうこともしばしばです。
「のどにタンがからんでいるようで、つまりそうです。内科で診てもらっていたんですが治りません」と、顔をしかめて来院された30歳の女性も、よく調べると肩と腰に異常があり、同様の治療で症状が改善しました。
のどと肩、のどと腰は関連が薄そうですが、経験的にみるとつながりは深そうです。腰椎の歪みが上体に負担をかけ、のどの周囲に及ぶ神経学的異常を生じているのかもしれません。
のどのおかしい人、腰や肩は大丈夫ですか。
(1995年9月)
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