平成7年は阪神大震災で明け、地下鉄サリン事件、オウム裁判、多くの金融界の不祥事件など、暗い話題が目立ちました。オウム事件では、多くの医師が殺人に関与していたことが気にかかります。医師は人を助ける知識がある反面、人の命を断つ方法も知っています。それだけに狂気を持った者に利用された時に、想像を絶する悲劇が生まれることになります。この事件の本質は、ニセ薬を作ってでもひと儲けしようとした麻原の過去にあると思います。ニセ宗教で純粋な医師などを騙し、本人のみが富と権力を得ようとしたことが全ての悲劇の根幹でしょう。我々は人としての基本的な道徳律はまず守ってゆきたいと思います。
 昨年このような大事件が相次いだことは、単なる偶然なのでしょうか。私は、この世を支配している「気」がゆるみ、重しがとれて世の中が混乱し、自然界がゆれ動いているような気がします。自然の営みから考えると、安定化するまで数年を要するかもしれません。政界が二大政党に収斂した時に、日本の安定が生まれると思います。
 冬の訪れとともにかぜが流行ってきます。かぜに葛根湯。少し体力に自信のない人なら麻黄附子細辛湯。朝起きてのどが痛い、背中がゾクゾクする、肩がこる、このような症状があればすぐに温かいお湯とともに飲みましょう。
 かぜのひきはじめに背中がぞくぞくすることがありますが、この部位はかぜが身体に入り込む入口のつぼで「風門」です。ここを指圧したり、マッサージしたり、カイロで温めたりすると体調が良くなります。
 私はかぜかなと思うとすぐに葛根湯を飲み、「風門」のつぼを刺激して治しています。
 冬はミカンの季節です。ミカンはかぜの治療薬にもなります。漢方ではミカンの皮を乾燥させたものを橘皮といい、この古いものを陳皮と呼んで生薬として利用しています。咳を止める、痰を除く、吐き気を止めるほか、健胃剤としても用います。かぜには、新鮮な果皮30グラムか陳皮15グラムをコップ3杯の水で3分の2くらいになるまで煎じ、適量のハチミツを加えて飲んで下さい。
 今年はかぜの予防に気をつけ、病気にならないようにしましょう。そして、明るい1
年を迎えて下さい。
(1995年8月)


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