「昨年は本当に楽でした。今年もまたやってくれませんか」
 「毎年花粉症でつらい目に遭っているのに、昨年はほとんど症状がなく、楽でした」

 このように、何人かのスギ花粉症をもっている方が1月の終わりに来院されました。数年前から始めたレーザー療法が好評で、花粉の飛ぶ前に治療をしておきたいと言われるのです。
 レーザー療法。これは、数年前から急に広まったアレルギー性鼻炎に対する治療法です。
 くしゃみ、鼻水、鼻づまり。アレルギー性鼻炎の三大症状です。この症状を軽減させるために、さまざまな治療法があります。次々に新しいものが出てくる抗アレルギー剤。抗原を少しずつ注射して体を慣らす減感作療法。その他、免疫療法、鍼灸療法、手術療法などがあります。抗アレルギー剤は、花粉の飛ぶ2週間前から飲んでおくと効果が高いといわれています。眠気などの副作用の少ないものも出ています。毎日、薬を飲むのはいやだと言う人には当然向いていません。減感作療法は1〜2週間に1度、2〜3年間ずっと注射を続ける根気強さが必要です。しかし、私の経験では効果は思ったほど高くないような印象です。(今、くすりの改良が行われているため、これからは効果的な治療となるかもしれません)
 レーザー療法は、鼻の中の下鼻甲介の粘膜にレーザーを照射する方法です。ここは鼻の粘膜の大部分を占め、炎症を起こしたり、腫れたりする所です。レーザーを照射することで粘膜のタンパク質が変性をおこし、アレルギー反応が起きにくくなります。粘膜に麻酔液を塗っておくため痛みはほとんどなく、時間は10分もあれば十分です。2回の治療でほとんどの人がよくなりますが、中には3〜4回治療をくり返して、やっと改善する人もいます。特に有害な副作用も考えられず、忙しい現代人に適した治療法といえます。
 私の今までの経験では、それまでの治療で治りにくかった人がレーザー療法で良くなったという例が多く見られています。特に鼻づまりの強い人には、有効な方法がなかっただけに喜ばれています。花粉症の人は、季節中はもちろん、季節の前に治療しても十分に効果があることがわかってきました。

 ところで、アレルギー性鼻炎はどうして起こるのでしょうか。鼻や口から空気とともに吸い込まれた花粉が、粘膜に貼りついて体の中に入ります。水分を吸った花粉からアレルギーの原因となる抗原物質が溶け、粘膜を通り抜けます。リンパ球が抗原を排除するために抗体という武器をつくります。抗体が肥満細胞にくっつきますが、目一杯くっつくまで一般に約10年かかるといわれています。この目一杯ついた抗体に抗原がくっつくと、肥満細胞からヒスタミン、ロイコトルエンなどが出てきて血管や神経に働きかけ、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりが生じます。花粉症にならない人は、この抗体をつくらないようにする遺伝子をもっています。花粉症になる人は、この遺伝子をもっていないか、働きが弱いといわれています。家族に花粉症の人がいたら、花粉症になりやすいわけです。花粉症になるまで10年〜20年とかかるため、ある日突然花粉症になることもありますので、注意して下さい。
 今年の花粉の量は、平年並みかやや少ないと予測されています。治療はいろいろとありますので、ご自分に合った治療法を見つけて、快適な生活を送っていただきたいと思います。

(1998年2月)

Q.花粉症とか、ぜんそくとか、昔から原因は変わっていないのに患者は増えているようです。食生活や大気汚染の変化で、免疫力が低下しているのでしょうか。
A.アレルギー疾患の増加について、いろいろと原因があげられていますが、我々の身のまわりに化学物質があふれ、身体の中で過剰反応を生じやすくなっていることも大きいと思います。


主な原因植物の開花時期および飛散期間


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