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「めまい、耳鳴り、聴力が悪く治療を受けているのですが治りません」 60歳過ぎのご婦人が来院されました。 舌を診ると、全体が赤くなっていますが、特に舌の先端周囲が発赤が強くなっています。 これは舌炎といってよい状態です。一般に消炎剤や軟膏剤を用いて治療しますが、実際は効果は余りなく、治りにくい病気です。 漢方的考えでは、舌の先端は心肺と関連があります。したがって舌炎は「心の陽気」が亢進した状態を示しています。寝つけない、顔面紅潮、いらいら、胸が熱い、口が渇くなどの症状も伴いやすいようです。漢方薬では、清熱作用のある黄連解毒湯、清心連子飲などを使います。人によってはよく効きます。 薬で治らない時は、針灸治療を試みることにしています。舌に関係する経絡は、脾経です。足の第1指を出発点として、足の内側を上って腹部に入り、脾臓から胃をめぐって横隔膜を通り、咽頭、舌に達します。この脾経の経穴は、太白、三陰交、血海などです。これらの経穴を刺激すると、冷え症、更年期障害などの症状も改善されます。自律神経の安定も図ることができます。この方にも脾経のつぼの治療を行いました。5日後に来院された時には、舌の症状も取れていました。 針灸治療は大変おもしろい治療法です。薬を使わず、何らかの原因で生じた気血水の身体の中での偏り、停滞を、一気に治してしまいます。身体の中に生じた異常を、針や灸を施すことにより、自己治癒力を生じさせ、自分自身で治してしまうのです。 肩こり、腰痛、膝痛、坐骨神経痛などの痛みはもちろん、耳鼻咽喉科の範囲では、めまい、鼻水、鼻づまり、咽頭痛、扁桃痛、頭痛、せき、たん、耳鳴り、耳閉感などを治すことができます。 舌痛症は治しにくい病気です。治療方法も針灸の本を読んでも書いていません。しかし、経絡の流れを考えてみると治療点が発見できます。こうした応用の効くことが大変おもしろい点です。漢方治療は西洋薬治療の限界を広げてくれました。そして針灸治療は薬物治療の限界を広げ、治りにくい病気にささやかな光明を与えてくれています。 (1998年6月)
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