(2020年6月25日掲載)
扁桃病巣感染症という聞きなれない病気があります。
堅苦しい定義は「扁桃が原病巣となり、それ自体はほとんど無症状であるか、 または時に症状を呈するといった程度に過ぎないのに扁桃から離れた諸臓器に 反応性の器質的または機能的二次疾患を引き起こす病態」をいいます。
分かりやすくいうと、「扁桃炎が原因なのに扁桃炎の症状が扁桃に出なくて別のところに出ること」、「扁桃炎の毒素が扁桃に出ず、皮膚などに出ること」です。
この病気の代表的なものに掌蹠膿疱症、IgA腎症、関節リュウマチなどが知られています。 掌蹠膿疱症は掌(てのひら)と蹠(あしのうら)に膿疱を伴う発疹ができるものをいいます。
耳鼻咽喉科と皮膚科との間の病気で、治療法が十分に確立していなく、たいていの診療所では抗生剤、抗ヒスタミン剤(かゆみ止め)、ステロイド軟膏などの合法で対応しているようです。
しかし、それでは今一つきれいに治らないのが現実だと思います。
私は掌蹠膿疱症の治療には東洋医学の知恵を生かした次の治療を行っています。
扁桃腺の治療、消炎作用の強い生薬から成る漢方薬、消炎作用の強い生薬からなる漢方軟膏を使っています。これらの三者併用療法を行っています。
扁桃腺に一定の刺激を与える扁桃腺の治療は、扁桃腺内の病原体が敵が攻撃していると解釈して勝手にその病原体の抗体を作り、その抗体が逆に病原体を攻撃してくれると考えられている現象を利用した治療法です。
消炎作用の強い漢方薬は何種類かありますが、抗生剤には無い消炎作用があり扁桃炎などには効果的です。
漢方軟膏はステロイドには無い消炎効果があり、重宝しています。
先日、手と足の発疹が半年も治らないという中学生を診ました。
明かな掌蹠膿疱症です。1か月で治るだろうと言って治療を始めました。
扁桃腺を治療したのち、消炎作用の強い漢方薬と漢方軟膏を出しました。
一週間後に来てもらうと足の発疹はほとんど治っていましたが、手はほとんど変化がありませんでした。一回の治療ではまだ十分に治っていません。
もう一度、扁桃腺の治療を行いました。
さらに一週間後に来てもらいましたが、まだ治ってなく治療効果は不十分です。
おかしいな、どうしたのだろうと思って聞いてみました。
「漢方薬飲んでいますか?」
「はい」
「漢方の軟膏塗っていますか?」
「・・・・・・・・・」
「えっ、塗ってくれないと治らないよ」と強くいいました。
それから、一週間してから来てもらうと、何と手もすっかりきれいに治っています。
「はじめから、漢方の軟膏を使っていると、早く治ったと思うよ」と言いました。
東洋医学の知恵などを利用すると、難病でもきれいに治すことができます。